スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

信頼の光の矢

マミまどSS。一周目のほむらがやってくる前なイメージ

鹿目まどかが魔法少女になり何度目かのパトロール。
巴マミに連れられ、まどかはソウルジェムの光を辿っている。
人を闇に引き込む、魔女、あるいは使い魔を探しだし、退治する。それが魔法少女の使命。
まどかはまだ魔法少女になったばかりの新米で、実際の戦闘ではまだほとんど活躍できていない。

この前の戦いのときも、マミの華麗で圧倒的な動きに目を奪われてしまい、ただただ見とれているだけであった。
その動きは芸術のようにまどかには見えていた。群がる使い魔たちをダンスを踊るように避け、撃退するその姿は何度見ても感動を覚える。
気が付いた時には魔女は消滅し、グリーフシードがまどかの目の前に転がってきていた。
まどかはそこでようやくハッとなり、グリーフシードを拾い上げた。

「ふう、一丁上がり、ね」
「マ、マミさん、これ」
「ありがとう鹿目さん。んー、でも…」

マミは手を口元にあて、まどかの全身を見つめる。
魔法少女に変身してはいるが殆ど動いてはおらず、マミと魔女の戦いによって巻き起こった砂ぼこりに、ピンクと白の衣装が少し汚れてるくらいだ。

「…まだ怖い?魔女との戦いは」
「え?あ…」

変身こそしたものの、マミの戦いに見とれるばかりで武器すら手に取っていない自分に気付き、まどかは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
いつまでもマミに守ってもらってちゃいけない。マミのような立派な魔法少女になるのが目標なのだから。

「怖いわけじゃないです!ただマミさんの戦い方すっごくて、つい見とれちゃって…」
「ふふ…ありがとう。鹿目さんが経験を積めば、私なんかよりあっという間に強くなっちゃうわよ」
「そ、そんなことないですよ!私がマミさんよりつよくなるなんて…」
「あら、そんなの分からないじゃない?」
「そんな想像できませんよ…」
「とにかく、このグリーフシードはあなたにあげるわね、鹿目さん」
「え?でもこれはマミさんが」
「いいの!変身するだけでも魔力は使うんだもの。最初のうちは一つくらい持っておきなさい、お守りにね」

そう言ってマミは半ば強引にまどかの手にグリーフシードを握らせた。
まどかの手をしっかり包み込んだマミの手はとても柔らかく、暖かいものに感じた。そして手の中に握られたグリーフシード。
元は人を食う魔女が落とした呪いの卵。だがそれも魔法少女にとっては穢れを吸い取ってくれる貴重なものである。

「お守り、か…。ありがとう、マミさん!」
「どういたしまして。頑張りましょうね、鹿目さん!――」




―――


その時にもらったグリーフシードをまどかは制服のポケットの奥底にしまっている。
魔法で収納することもできるし、そっちの方が無くす心配もないのだけれど、いつでもこの『お守り』に触れていられるのが嬉しくて、
まどかはあえてポケットに入れていた。

「鹿目さん、どうかした?」
「いえ、なんでもないです。てへへ…」
「?そう。…そろそろかしらね」

まどかとマミ、2人のソウルジェムの輝きが少しずつ増してきた。魔女か使い魔が近い印だ。
周囲の人にも気を配らなくてはならない。もしかしたら魔女の口づけをされてる人が居るかもしれない。

「大丈夫?」
「はい。あの、今日は私、足手まといにならないように頑張りますから!」
「ふふっ、頼もしいわね。でも無理は禁物よ?危なくなったら下がってていいから」
「はいっ!」

元気よく返事をしたものの、後ろで見ているだけのつもりはまどかにはなく、マミの足を引っ張らないようにと意気込んでいた。
これ以上マミにのみ戦いを任せるわけにはいかない。

(マミさんと同じ、他の人の役に立てるようにならなきゃ!)

かつて自分がマミに助けられたとき、まどかは自分もマミのようになりたいと心から思った。
華麗でかっこよく、人の命を助ける正義の味方。それはかつてまどかが夢見た理想のヒロイン像でもあった。
子供のころに夢中になった子供向けアニメのそれに近い。そして今は自分自身がその魔法少女になったのだ。

『マミ、まどか。聞こえるかい?』

と、2人の頭の中に声が響いた。
マミとまどかに魔法少女としての力を与えたキュゥべえだ。
普段は一緒に行動するのだが、今日は二手に分かれて魔女の位置を探していた。
テレパシーでお互いの位置を知らせている。キュゥべえは体が小さく、人の入れないところでも探れるのだ。

『キュゥべえ、魔女の場所は分かるの?』
『ああ、確認したよ。君たちの場所からそんなに遠くはないね。商店街の外れにある潰れたコンビニの駐車場だ』
『分かったわ。すぐそっちに向かうわね』

「マミさん」
「じゃあ、ちょっと急ぎましょうか鹿目さん」
「はい!」

マミはまどかの手を握り、2人一緒に駈け出した。
少しどきりとしたまどかだったが、それがマミに気づかれている様子はなく、それで一安心だった。
これから戦いに赴くというのにちょっと舞い上がり過ぎてるかもしれない。

マミさんと一緒に居れば怖いものはない――
まどかの精神的余裕はそこにあることはまどか自身にもよく分かっていた。



外された看板に代わり、でかでかと掲げられているのは『テナント募集』の文字。
まどかも何度か足を運んだことのある建物の中はすっかりガランガランで、駐車場では雑草がコンクリートをたくましく突き破って生えてきている。
2人のソウルジェムが激しく光を放っている。ここに魔女、もしくは使い魔が居るのは間違いなさそうだ。

『来たね、マミ、まどか』
「キュゥべえ!」
「誰か一般人は来てないかしら」
『大丈夫。魔女の口づけを付けた人は紛れ込んでいないよ、今のところはね』
「とりあえずは安心ですね」
「そうね。なら、後は早いこと片付けましょう!」

マミがソウルジェムを取り出し、マミの誇り高さを表すような金色の眩い光が彼女を包み込む。
瞬く間に魔法少女へと変身した。まどかも自分のソウルジェムを掲げ、桃色の優しい輝きに包まれた。
無力な自分から力を持った自分へなれる。まどかはこの変身する瞬間がとても好きだ。
もっとも大した活躍をしてないわけだし、それを実感するのはおかしいのだろうが。

「はやく行きましょう、マミさん!」
「あらあら。鹿目さん今日は張り切っているわね。…では、行きましょうか!」

マミは魔法の力でマスケットをどこからともなく取り出し、入り口めがけて引鉄を引いた。

銃声と同時にほぼかき消されるようにパリンという音が響いた。
それはコンビニの自動ドアが割れたものではない。
空間に歪が出来上がり、まるでガラスのようにバラバラと割れた。風景が割れた、とでも言うのか。
この異空間に入り込み、奥底に居る魔女を撃退しなければならない。

マミは軽やかに跳ね、異空間へと飛び込む。
恐れどころか余裕に微笑んでさえ見せるその姿は、まさにベテランと呼ぶにふさわしい風貌と言える。

(私も、マミさんみたいになるんだ!)

今一度決意し、まどかもまた空間の歪へと飛び込んでいった。



地に足を付け、まどかは辺りを見回す。
コンビニの中とは思えない大きく開けた空間がそこにある。この奥に突っ込み魔女を探し出すのだ。

「さあ…来たわよ!」
「……!」

マミがマスケット銃を両手に持ち、まどかも弓を取り出す。
すると魔女の手下の使い魔達が侵入者を拒むかのように突如出現し2人を取り囲んだ。
非常に数が多く、開けていた空間はあっという間に狭苦しくなった。

「多いわね…いい鹿目さん?蹴散らすわよ!」
「はいっ!」

まどかの弓は追尾機能がある必中の弓だが、そんなものも必要ないほどに使い魔たちはひしめき合っている。
適当に撃つだけでも十分有効だろう。まどかは複数本の光の矢を引き絞り、使い魔たちに向けて放った。

敵を撃ち抜き消滅させる光の矢。それを放つまどかの背中では、マミのマスケットの銃声が咆哮を挙げている。
単発式の銃にも拘らず、とめどなく耳に響くマスケットの銃声はマミの魔力の高さを示している。

マミの戦い方は殲滅戦。魔女だけでなく、魔女の産み出す使い魔も徹底的に滅ぼすのがマミのやり方だ。
普通、他の魔法少女は魔力を温存するために魔女のみに狙いを絞り、グリーフシードの入手を優先するらしいが、
まどかはマミのやり方が正しいものだと思っている。使い魔だって放っておけば魔女になってしまうのだし、
逃した使い魔が人を襲ってしまっては意味がない。
と、使い魔たちから反撃が飛んでくる。電球に足が生えたような外見の使い魔は、頭からビームのようなものをまどかたちに向けて放ってきた。
2人は宙高く跳躍しそれをかわすと、上方から一斉に攻撃を放つ。放った攻撃はいずれも狙いを違わず使い魔を捉えているが、どうにも数が多くキリがない。

「一気に薙ぎ払うのが手っ取り早いわね…。鹿目さん、少し待っててね」
「わっ、私も…!」
「大丈夫、心配しないで」

そう言うとマミは一人使い魔の群れの中に飛び込んだ。
まどかは取り残される形になり、宙に浮いているオブジェに取り付きながらマミを眺めるしかできなかった。
マミが自分のことを心配しての事だというのは分かるが、まどかとしてはあまり面白くはない。

―私じゃマミさんの背中は守れないのかな…。今日は張り切ってたんだけど


使い魔の群れの中に颯爽と飛び込み、マミは再び両手にマスケットを取った。
今度のはさっきまでとは違いかなり大きめのサイズ。ほとんどランチャーのようなサイズである。
マミが不敵な笑みを浮かべながら両手を広げ、巨大マスケットの引き金を引いた。

「!」

まどかは思わず言葉を失った。
2丁のマスケットの砲口からビームのような光の奔流が走り、大量の使い魔たちを飲み込んでいく。
そのままマミは全身を半回転させビームを振り回すと、使い魔たちを巻き込み、あっという間にその数を減らしていく。
華麗な動きながら見た目は派手で豪快。まどかが開いた口がふさがらないでいると、全て片づけたマミがまどかの方に微笑みかけてきた。

(マミさん…やっぱり凄い…!)

「行くわよ、鹿目さん!」
「は、はい!」

オブジェから飛び降りまどかが着地すると、マミに手を引かれまどかは共に走り出した。

―確かにこれじゃあたしはまだ足手まといかも…。もっと強くならなきゃ!
―あたしもマミさんみたいになりたい…!

マミの圧倒的な強さに惹かれ、まどかの決意は更に強まっていくのだった。




しばらく走り続けていくと、やがて開けた場所に出た。
道中でもいくつかの使い魔と遭遇したが、数に囲まれることはなく、軽くいなすくらいように突破できた。
見たところもう奥に繋がる道はなさそうだ。おそらくここが最奥、つまり魔女が潜んでいるはずである。

「着いたわ」
「ここに魔女が…あ、マミさん、あれ!」

部屋の中央には巨大な球体が居座っている。
見たところ完全に無機物のようだが、使い魔や魔女にそんな常識は通用しない。先ほどの使い魔も電球に足の生えたようなデザインだったし、
あれが魔女である可能性も否定できない。そしてそれは見事に的中する。

『あれがここの空間を作ってる魔女だね』
「やっぱり、あれが魔女?」

透き通った球状の物体。無色透明で表情など見えない。
と思いきや、こちらの存在を認識したのか、その魔女は変化を見せた。
体(?)の表面全体にさまざまな色のかけらがちりばめ始めた。サイズや形もばらばらで、しかしどこか対称的に配置されており芸術的美しさすら感じさせる。
表情は絶え間なく変化し、その様に二人はとあるものを連想した。

「きれい…あれってまるで…」
「万華鏡ね。中身の景色だけを切り取った感じかしら」
「あんな魔女も居るんだ」
『油断は禁物だよ。あれでも魔女だからね。どんな能力か…』
「とにかく、早く仕掛けよう!」

まどかは弓を取り出し、魔女に向けて矢を向けた。
先手必勝とばかりに意気込んだまどかをマミが制止する。

「待って鹿目さん、ちょっと確かめたいの」
「マミさん」

マミはまどかの前に立ち、右手にマスケットを取り出して魔女に向けるとまどかに対してぱちんとウインクした。

「ちょっとだけ下がっててね」

マミが指を引き金にかけ、銃声が鳴る。
魔女はそれなりの大きさだし、問題なく当たったものだとまどかは思った。
ところがマミの背中越しに見たのは驚きの光景であった。狙っていた魔女に傷はついておらず、逆にマミが持っていたマスケットが無残に砕かれ、マミの手からぼろぼろと落ちていた。

「マミさん、怪我は!?」
「大丈夫。それより…あれ見て」
「あ…」

マミが指差したその先。魔女の周囲に装飾が施されたような平たい物体が多数浮かんでいるのが見えた。
いったいいつの間にあれを展開したのか、あれも魔女の一部か、もしくは使い魔か。
その物体をよく見ると鈍いながらも光を反射しているように見える。

「か…鏡…?」
「魔法で出来た鏡ね。あの魔女の能力でしょう。あれでこちらの飛び攻撃を反射するんだわ」
「じゃあマミさんの、その銃も?」
「反射されたのを咄嗟にね。でも厄介ね…」
『ああ。…この魔女は君たちにとって…最悪の相手だね』
「………」
「そ、そんな…」

マミもまどかも、基本的には遠距離攻撃を主体にした戦いをする。
相手の魔女がこちらの攻撃を全て跳ね返せるのなら、キュゥべえの言うとおり2人にとっては相性が悪い。
戸惑いを隠せないまどかを見透かし挑発するかのごとく鏡を展開させている。
万華鏡のような魔女の表情も、その鏡の動きに連動して変化している。

「落ち着いて鹿目さん。」
「でも…」
「ほら、あの魔女…こちらの様子を伺ってるようだけど、直接仕掛けてくる様子はないでしょ?」
「あ…確かに」
「あれならまだ付け入る隙があるかもしれないわ。諦めるにはちょっと早いわよ?」
「…そうですね!」

まどかは自分の頬を叩き、気合を入れなおす。
マミの強さはいついかなる時も平静さを失わず相手から目を離さないことにある。
まどかも勉めて相手の動向を探った。

「こちらの攻撃が利かないなら…直接攻撃を仕掛ければ…」
「それもいいけど…」
『のんびり話してる場合じゃなさそうだよ2人とも!』
「!」
「使い魔が!?」

ここに来るまで何十体と倒した使い魔がまどかとマミ、2人を取り込むように突如出現した。
しかしその時と違い、こちらに積極的に仕掛けてくる様子はなく、不気味にじっとしている。
まどかはほぼ反射的に弓を取り出し、使い魔たちに弓を引いていた。

「使い魔…!」
「鹿目さん待って!」

マミの静止の言葉は既に遅かった。
その叫びがまどかの耳に届いた時には既に矢を解き放った直後であった。

「えっ…?」

まどかが使い魔に放った筈のピンク色の光の矢はまどかの顔面に向けて猛スピードで迫ってきていた。
完全に予想外の出来事で反応が出来ず体が動かない。

「くっ!」

やわらかくて暖かい感触がまどかの全身を包み込んでいた。
目の前に迫っていた光の矢はまどかに当たることはなく通り過ぎていった。

「マミさん…」
「掴まってて!」

マミに体を抱きしめられ、難を逃れられた。
しかしまだ危機は去らない。反射されたまどかの矢はまだまどかを狙っている。
マミはまどかの体を抱きかかえたままにも関わらず俊敏な動きで攻撃を避け続けている。
矢は一発しか撃ってないはずだが攻撃が止む様子がない。

「こ、これって一体…?」
「使い魔にビームを撃たせてるのよ!それを何度も鏡に反射させてるんだわ!」
「これがこの魔女の戦い方…」
「舌噛まないで!」
「きゃあ!?」

マミの動きにまどかの体が強く引っ張られる。
大きくてやわらかい胸に顔をうずめながらも、忙しく2人を狙うビームがまどまの視界に入る。間違ってもその感触に浸る余裕なんてない。
ビームが激しく交差する圧巻な光景であるが、これではマミに守られているだけだ。むしろお荷物になっていることに気付き、まどかは耐えられない思いに駆られる。

「マミさん、私一人でやれますから!」
「待って、今は離れない方が…」
「でも二手に分かれた方が」

そういったやり取りをしていたほんの刹那。強い衝撃がまどかに走った。
今度はいったい何が起こったのか。衝撃とともに、マミの低く短い悲鳴がいやに鮮明にまどかの耳へ届いた。
ついていくことが出来なかった俊敏な動きが一気に止まり、まどかを抱いていた腕の力が抜けていく。
まどかはそのままマミに抱かれたまま地面に倒れこんだ。

「うっ…くあ…」
「マミさん!?マミさん!!」

失敗だった。一瞬とはいえマミの気をそらしてしまった結果、使い魔の放ったビームにマミは倒れたのだ。
必死に声を上げてマミの名を呼ぶも、肩で苦しそうに息をするだけだ。

しかし無情にも魔女たちは攻撃の手を緩めることはしてくれなかった。
マミはまどかに覆いかぶさったまま、使い魔の集中砲火を一気に受けることになった。

「ああああああああああ!!」
「マ、マミさん!やめて、死んじゃうよぉ!」

マミの聞いたこともない悲痛な悲鳴にまどかは全身がすくみ上る。
まどかもまた恐怖と絶望に泣き叫びながらマミの名を叫ぶが、それでは事態は変わらない。

(どうしよう、どうしよう…?私のせいでマミさんが死んじゃうぅ…!)

冷静になって頭を働かせたいが、そう思えば思うほど何も頭が回らない。
そうしている間にも目の前のマミは苦しそうに顔を歪めている。いや、その程度の表現では生ぬるい。
次第にまどかは自身の涙でマミのその苦悶の表情さえ滲んでしまう。

「落ち着いて…かな、めさん…」
「うぐ…うぇ…」
「ッ…!」

マミが胸のリボンをほどく動作が見えた。するまどかとマミのと二人は揃って陰に隠れ、攻撃の振動もすっかり病んでいた。
マミのリボンの魔法。魔法で大きくなったリボンを周囲に展開しバリアとして展開していた。

「はぁ…はぁ、はっ…うぅ…」
「マミさん!わ、わたし…」

自分はいったい何を言いたいのか、まどか自身にもわからなかった。
何かを言わなければいけないような気がして、しかし何も言えない。
自分のミスなんだから謝らないといけない―でもマミの怪我だって心配で仕方なく、結局は言葉を詰まらせるだけでこんなに情けないことはなかった。
しかし目の前のマミはまどかに対して起こることはなく、むしろいつも通りに笑顔を向けてくれようとしていた。
マミの人差し指が、言葉を発しきれないまどかの唇を優しく抑える。

「聞い、て…鹿目さん…あの魔女を…倒して」
「え…私が…!?」
「使い魔と鏡は、わっ…私が…引き、付けるから…その隙に」
「む、無理ですよ…私なんかじゃ…私の弓じゃあの魔女に弾かれちゃいます!」
『そうとも言えないよ?』

また突如にキュゥべえが二人に語りかけてきた。異空間に入ってからというもの姿を見ないがどこに居るのか。
そしてこの状況を見ていても声のトーンはいつも通りで焦りや心配をしているような様子が見受けられない。だが今はそんなことはどうだっていいのだ。

「どういうこと?」
『マミが最初にあの魔女に攻撃した時のこと思い出してみなよ。マミは真正面からあの魔女に攻撃した。結果、あの魔女は魔法の鏡を展開し、マミの攻撃を跳ね返した』
「そんなの分かってるよ!それがなんなの!?」
『だから冷静になりなよ。あの魔女、確かに能力は【反射】の力だ。でもマミの攻撃に対しては、わざわざ鏡を展開したんだ…それが答えだよ』
「あの、魔女は…自分自身、では攻撃を、跳ね、返せないのよ…」
「……!」
「だから、鏡に妨害され…ないよう、に、至近距離から、ッ…攻撃、するの…」

―私本当に何やってるんだろう…こうも何もできないなんて…
―マミさん大怪我してるのに…私なんかよりずっと冷静にモノを見てる…

使い魔たちの攻撃がより一層激しさを増し、二人を守っていたマミのリボンがほころびかけていた。これ以上長くは持たないかも知れない。
だがまどかの心は既にしっかりと決まっており、覚悟も出来ていた。緊張に全身と声が震えるのは抑えられなかったけど。

―やらなきゃ…やらなきゃ!
―マミさんは私のせいで大けがを負った…でも償いとかお詫びとかそういうのとはちょっと違う気がする…
―私自身がやらなきゃいけないって思ったから。マミさんも、私を信じてくれてるって思うから、だからやらなきゃいけない…!
―私は…みんなに希望を与える魔法少女なんだから―!

「…マミさん、どうしたらいい?」
「!…ありがとう。さっき言った通り…私が使い魔と鏡を引き、付けるから…魔女のところまで、一気に走っ、て、零距離から、あなたの…最大の攻撃を撃ち込むの…!」
「分かりました…!」
「ふふっ…頼もしいわね…。…ただ……」
『……。まどか、マミと僕はああ言ったけど、実際に魔女の本体に君の攻撃が利くかはは推測の域を出ないよ?もしかしたらそれをやった直後に、君自身が大ダメージを受けてしまうかもしれない』
「大丈夫だよ。マミさんが言うんだもん。私は信じるよ」
『…僕も言ったんだけどなあ』
「ごめんごめん、キュゥべえのことも信じてるよ」
「強いわね…鹿目さん」
「ティヒヒ…そんなことないですよ」

使い魔のビームがついにリボンの一部を撃ち抜いた。外部の光がわずかに入り、まどかの顔を照らす。
マミの表情は逆光でよく見えなかったが、まどかは満足だった。
マミは大きく深呼吸をし、そして逆光に負けないほどの強い輝きを放った瞳がまどかを見つめる。

「…行くわよ鹿目さん!」
「はい!」

マミはマスケットを二丁取り出し地面にそれぞれ撃ち込んだ。
マミが得意とするリボンの魔法の応用型。弾を撃ち込んだ穴から黄色のリボンが植物のように生えてくるものだ。
マミが手をかざすと、リボンのバリアを内側からぶち抜き、周囲に居る使い魔と鏡を絡み捕えていく。
負傷しているとは思えないほどにキレのいい魔法だ。捕えた敵を勢いよく振り回し、鏡にぶち当てて叩き割っていく。

マミが勢いよく立ち上がると、まどかも迷わず立ち上がり、わき目も振らずに魔女へと疾走した。
マミの活躍はほんの一瞬しか目に見えなかったが、耳に届いてくる騒がしい音がまどかにそれを教えてくれる。
と、まどかの目の前に魔女の操る鏡が現れた。しかしビームを反射するための動きには見えず、激しく回転してまどかの方に突っ込んできていた。
緊急時にはこうやって鏡を直接ぶつけてくるのがこの魔女の戦法の一つなのだろう。
まどかは目を瞑り、しかしスピードを落とすことなく突っ走った―。

ガシャンという、ガラスの砕かれた音…。特に驚きはしなかった。まどかがゆっくりと目を開くと、鏡の無数の破片が踊るように宙を舞っている。ガラスの破片が光に反射して綺麗だが少しまぶしくもある。
それと同じに、まどかの横からまっすぐと走る黄色いリボン。まるでマミがまどかのやるべき道を記してるかのごとく、魔女へ向けて伸びていた。
マミのリボンが、鏡を打ち砕いてくれたのだ。鏡のかけらにマミの姿が見えた。既に後ろ姿で他の鏡を割っていっているが、その姿を確認できただけでまどかは満足だ。

―マミさんが守ってくれるんだもの…私だって怖いものなんか、ない!

魔女の表情が目まぐるしく変わる。
人間の顔とは程遠いが、まどかにはそれが焦りの表情に見え、今が攻め込む絶好の好機だと確信した。
まどかは弓を取り出し一気に駆け寄っていく。

『キュギィィイィィィィイィィィ』

鼓膜を揺るがすような魔女の金きり声。魔女の示威行為であろう。
だがそんなもので今のまどかは怯んだりしない。周囲の鏡も次々にマミに破壊されており戦闘力は目に見えて下がっている。
まどかは宙高く跳躍して魔女にとびかかり、弓の胴の部分をを叩きつけると、光の矢を取り出し弦を思い切り引き絞った。
魔女の万華鏡のような表情が形を崩す

「必殺…ティロ・フィナーレ!!」

渾身の力を込め光の矢を魔女の体に撃ち込んだ―。
球状を取っていた魔女の体は大きく乱れ、体の内側からまどかの弓と同じ光が次々あふれてくる。
魔女は相変わらず苦しそうに悲鳴を上げている。最初はかなり高い声だったのがずっしりと重く低い悲鳴に変わってきた。

『オボオオォォォォォォォォオオォオ……』

魔女から溢れる光の奔流がやがて血のような液体に取って代わり、魔女の本体は小さくしぼんでいきやがてはじけ飛んだ。
同時に魔女の断末魔も止まり、使い魔は消滅、辺り一面に静寂がおとずれることになった。

「や、やった…のかな」
『そのようだね。あの使い魔はどうやら魔女の一部だったみたいだね、他の使い魔とは違うタイプだったみたいだ』
「そう、なんだ……」

自分の手で魔女を倒した、その実感がまどかはまるでないでいる。
呆けているまどかの目の前に、コロンと何かが落ちてきた。魔女の生まれる前の姿、グリーフシード。
それを拾い上げて見てからようやくまどかに実感がわきあがってきた。

『おめでとうまどか。それは正真正銘、君のグリーフシードだよ』
「私の…?これが…」

魔女を初めて、自分の手で倒せたというう実感。
だがこれは自分だけの力ではない。マミが大怪我ながらも自分のことを元気づけ支援をしてくれたからに他ない。

「…!マミさん!」

―私馬鹿だ!浮かれてる場合じゃなかった、マミさんは…!

「マミさん!」

後ろを振り返ったまどかの目に飛び込んできたのは、床にがっくり膝をつき、両手で胸元を抑えている。さっきよりも症状はずっと悪化しているのは目に見えて分かる。
まどかは弾かれたようにマミに走り寄った。その顔色は真っ青であり、見ているこちらが辛くなってくるほどである。

「大丈夫ですかマミさん!?」
「ご、ごめんね鹿目さん…凄かったわよ、あなたの戦い方」
「そんなこと良いですよ!マミさんの怪我が!」
「少し休んでいれば…」

まどかにはとてもじゃないがそんな風には見えない。
マミの体を支えてあげたいと思うが、少し触れただけでもその体を傷つけてしまいそうで何もできないでいる。

「で、でも…!」
「心配しないで…っ…やっと、仲間が出来たんだもの…可愛い、後輩を一人ぼっちにはさせない、わ…」
「分かりましたから…お願いマミさん…!しっかり…!!」
「情けない顔…しないで…あなたも、一人前になったんだもの…ね?」

―こんな状況でだってマミさんは私のことを思ってくれている。痛いのはマミさんなのに。辛いのはマミさんなのに。
―その体を抱きしめることさえできないなんて。

どうしようもできず、まどかの目から涙があふれ出る。声も震え、嗚咽で喋ることさえままならない。
そんなまどかを見てか、マミは体をまどかに傾け、寄りかかった。

「ホントは…抱いて、あげたいんだけど、ね」
「………!!」

―もし今、願いを一つかなえられるとしたら迷いなくマミさんを助けてくれるように願うのに。魔法少女になって多くの人を助けるのが私の喜びだった。
―でも身近にいる好きな人を助けることができないんじゃ、何も変わらない。
―マミさんを、…助けたい

まどかはそう強く心に想い、密着しているマミのおでこにそっと唇を触れた――

―――
数日後。

魔女との激しい戦いから一転、まどかは昼間はただの中学生である。
一日の授業が終わり、クラスの仲良しで昔からの親友、さやかと仁美と一緒に学校の門を出た。

「いやぁ~今日も疲れたね~ホント!」
「さやかさん、最後の方眠ってたおられましたよね?」
「イビキもかいてたよね…先生にらんでたよ?」
「んまあそのおかげで今は元気だけどね!」


「まどかさん、今日も例の先輩のお家に?」
「う、うん」
「ったく隅に置けん奴め~!私の嫁だろまどかは~!」
「さやかちゃん、く、くすぐったいってば」

さやかがまどかにひっしと抱きつき、頬をこすり合わせる。
さやかがまどかに引っ付き、その様子を仁美が微笑ましげに見つめる。3人にとってはごく普通の光景であり、日常である。

「もう…そんなんじゃないんだったら」
「さやかさん、そろそろ放して差し上げた方が」
「ちぇー」

唇を尖らせながらもさやかはいつも最後には解放してくれる。
さやかはとても人懐こく、それでいてまどかのことをよく汲んでくれて、まどかにはとてもありがたかった。
仁美も仁美で、まどかの用事が大事なものだと分かってくれてるのだろう。古くからの親友である2人に
まどかは少し乱れた制服を整えた。

(ありがと、さやかちゃん、仁美ちゃん)

「じゃ、また明日ね2人とも!」

「さようならまどかさん」
「じゃねーまどか」

――

何度目かに訪れたマミの部屋。
まどかはマミに渡された部屋の合鍵で中に入り、マミの寝ている寝室へと入った。

「お邪魔しますマミさん、大丈夫ですか?」
「鹿目さんいらっしゃい、今日もありがとう。おかげで大丈夫よ」

あの魔女との戦いの後、マミの額にキスをした瞬間2人は白い光に包まれた。
まどか自身何が起こったかわからなかったが、その輝きが収まった時、驚くことにマミの傷がふさがっていた。
マミはそのまま安らかな寝顔を見せ、痛みからも解放されている風で、あっけにとられながらもまどかはほっと息をついた。

―この時キュゥべえから聞いた話では、この時の光は私本人が持つ治癒魔法ってことだった。
―私はエイミーって言う猫を生き返らせることを願い事に魔法少女になった。それが関係して回復にすごく特化したものなってるらしい。

それが分かってまどかついマミの体を力いっぱい抱きしめたりした。
眠るマミを抱きかかえて家まで連れ帰ってきたときはさすがに疲れたが、まどかはマミのぬくもりを感じることが出来、それで幸せだった。
それでも一応大事を取り、学校をしばらく休んでいた。

マミのベッドの傍らに一つ置かれるグリーフシードが置かれている。
まどかが倒した魔女のもので、まどかがマミに渡したものである。
マミからお守りとしてもらったと同じようにまどかもマミにお守りとして渡したものだ。
マミは最初は頑なに受け取らないでいたが、まどかの押しに負けて結局受け取ったのだった。

「明日から学校には行けそうね」
「良かったー…これでまた魔法少女できますね!」
「ふふっ…そうね。……鹿目さん」
「はい?」

マミが柔和で優しそうな表情でまどかの手を取り、体を抱き寄せる。

「マミさん…?」
「じっとしてて…」

マミの左手がまどかの頬を撫で、まどかの心臓は跳ね上がるほどに強く鼓動を撃つ。
そして心臓が一度鼓動を撃つ、その一瞬。マミの顔がまどかの目前にまで迫る――

「……!!?」
「…おかえし♪」

頭の中が真っ白になる。いたずらっぽく笑顔を見せるマミと頬に残るほのかな甘い感触。
一拍おいて二拍おいて。まどかは自分の顔が熱くなっていくのを感じた。
自分の頬に触れそれが分かった。

「マ、ママ、マミさん!?」
「もう…こっちが恥ずかしくなるじゃないの」

まどかにつられてか、マミの表情も途端に崩れた。
マミは格好を付けたつもりなんだろうけどまどかがあまりにも純情で、マミもつい引っ張られてしまう。
結局二人とも背伸びすることができないのだ。マミはまどかの体を抱きしめベッドの上にまで引き込んだ。

「鹿目さん、これからも一緒に戦ってね」
「そんな。戦い以外でも一緒に居たいです!」
「ふふっ…ありがとう」

誰にも邪魔されない二人きりの空間。
戦いに身を置く二人の戦士も、今は仲睦まじく触れ合い、お互いを感じ合っているのだった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

こなゆきガンタンク

Author:こなゆきガンタンク
らき☆すた大好き。高良みゆきは俺の嫁だが、こなた×みゆきの百合も好き。広橋涼のこなたをはじめ、らき☆すた初代声優を応援している。らき☆すた以外ではガンダム。種厨のシン厨、でもTVシリーズは大体網羅してるよ! ニコニコで動画を作ったりSSを書いたりもする。
ニコニコ動画
twitter
pixiv

最新記事
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
twittarブログパーツ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。